The Nightingale and the Rose(13)

ナイチンゲールの声は、かぼそくなっていきます。翼はピクピクと、脈うつようになり、目には死のおとづれを告げる薄い被膜が下りてきました。ナイチンゲールの歌う愛の賛歌は、殆ど聞き取れないほどかぼそくなって、こみあげてくる胸のつかえを吐き出した時、それが最期の絶唱となりました

おわりまでナイチンゲールの歌を聴いていた月は、夜明けが来たのもわすれて、空にすっかり長居してしまいました。歌を聴いていたのは赤い薔薇もです。陶酔した赤い薔薇は全身をふるわせて、徐々にひらく花びらを、朝の冷たい空気に曝さらしていきました

ひびきわたる愛の木霊こだまは、夜明けの紫にそまる丘の洞窟にまで届くや、ねむる羊飼をまどろみから覚まします。こだまは川に繁茂する葦よしをそよがせ、葦のそよぎは愛の福音を海へとはこんでいきました

「ごらん、あれを」と薔薇の木がナイチンゲールによびかけます。「赤い薔薇がついに出来あがったよ」と。しかし、ナイチンゲールの返事はありません。棘で胸をさしぬいたナイチンゲールは草むらの底に絶命していたからです

ひるになり、学生は窓を開けて庭を見ました

and her little wings began to beat, and a film came over her eyes. 逐語訳者たちは「羽ばたきはじめ」とか「目がかすんできた」とか、ぬるい言葉にしているが、どうなのかねえ。ワイルドは西洋人だから、リアルな描写をしているのだと思うよ。人も死ぬまぎわには目にfilmが下りてくるしね

 

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