心地良い空間は、心を鎮める効果があります。
場所は、蛸薬師通からすま東入ル。OAK21というスポーツクラブの近くです。パームビル内に入ると、周囲の喧騒が瞬時に消えて、ホッとします。奥のエレベータで4階へ。半円窓の飾り棚にお花を活けて、「和」のお出迎え。絨毯は濃紺。当診療所のインテリア・デザインは、ここからスタートしました。
次に、本物の、いい椅子を。坐り心地は何度も確かめました。張地は、絨毯の濃紺とのコントラストをつくるために、主に赤を選択。患者さんの個性を大切にする思いから、一脚一脚、椅子は違います。待合の壁は、白と腰板木地の茶の組合せ。禅寺の建築意匠をとりいれたつもりです。
入口自動扉の当診療所ロゴマークは、氷裂文(ひわれもん)と蛸唐草、円相の組合せ。氷裂文は梅とセットで春の訪れを表現することが伝統的ですが、蛸薬師通にちなんで元気な蛸唐草を合わせてみました。患者さんの健康の恢復をお祈りしています。受付カウンター奥の円鏡も同様です。
待合には、円卓をご用意。ヴィジュアルな本を中心に、ちょっとしたライブラリになっています。2つある診察室は腰板パネルと、ウィリアム・モリスがデザインした壁紙の組合せで、「洋」のおもてなし。「るりはこべ」(カウンター奥)「アカンサス」(カーテン)「スクロール」(1診)「柳の枝」(2診)の4種類、本物のモリス・デザインが楽しめます。
モリスは、アーツ・アンド・クラフト運動をおこし、生活美学を提唱したことで著名な19世紀の英国人。芥川龍之介や永井荷風、柳宗悦などにも影響を与えています。ぜんたいに、京都三条界隈の近代的な街並にあわせ、東洋(日本、中国)と西洋の美的調和を図ってみました。お花や美しい意匠には、こころを鎮めると同時に、癒すちからがあります。私が「心療内科・精神科クリニックならば当然の内装」と考える理想を、かたちにしてみました。
ビルの4階にございます当診療所は、周囲の喧騒から隔てられ、静かな環境にあります。聞こえてくるのは近くの高倉小学校と御射山公園で遊ぶ子供達の声。窓からの景色は遮るものが少なく、東山から柔らかい風が通り抜けています。
診療所内も落ち着く空間ではございますが、風と景色から心地よさを感じていただければ幸いです。