「楽人がくじんたちが持場もちばの席にすわり」と若き学生の独白どくはくはつづきます。「弦のしらべを奏でだすと、あの人は、ハープとヴァイオリンの妙なる音ねに合せてダンスをするのさ。そのダンスときたら、とっても軽快でね、足は床にはつかない程なのだ。華やかな衣装をまとう廷臣たちがむらがってきて、あの人をたちまちとりかこんでしまう。だから僕とは踊ってはくれないよ、あの人は。だって、僕には、彼女に渡すべきはずの赤い薔薇がないのだから」。学生は草むらに身をなげて横たわり、両手に顔をうずめています。さめざめと泣いているのです
「なぜって、この男は泣いてるんだい?」 尻尾を立てて、学生の傍を走り抜けてきた、みどりのちびすけトカゲが訊きました。「そうね、なぜかしら?」とお日様のひかりをおいかけて、ふわりふわり、辺りを飛んでいる蝶々も、疑問を口に出しました。「そうね、なぜかしら?」ひなぎくも、おとなりさんに、こそこそ、低いやわらかな声でささやきあっています。そこにナイチンゲールが「赤い薔薇がないと仰って、泣いているのだわ」と答を言いました
「え、そんなことで?」 みんな声をそろえて呆れました。「こいつあ、とんだ大馬鹿野郎だぜ」とちびすけトカゲ。冷笑家の気味あるトカゲは、遠慮会釈なく呵々大笑
he flung himself down on the grass and wept. 絵本の世界では「泣く姿勢」というものがある! んです。(笑) これは『星の王子様』を先に読んでいたから、できた「発見」なのですが、The Little Prince も、草むらに身を投げ出してさめざめと泣くシーンがあって(第21章末尾)、ふたつは奇妙な合致をしめしています
daisy. ひなぎくと聞くと、自然思い出されてくるのが、daisy-chainをつくるのも、なんだかめんどうくさいわと思う、午後の物憂さから始まる『不思議の国のアリス』の冒頭。すると、ピンクの目をした白ウサギが走って来て、アリスの「冒険」がはじまるわけですが…
この記事へのコメントはありません。