The Nightingale and the Rose(9)

学生は草むらから顔をあげてナイチンゲールのなき声に耳をすませましたが、ナイチンゲールのつたえたいことは何一つわかりませんでした。この青年には、書物に書いてあることがこの世のすべてであったからです

しかし柊樫ヒイラギカシには伝わりました。樫の木は、泣きたい気分になりました。というのも自分の木に巣をはってくれたこの可憐なナイチンゲールを愛していたからです。「最後にひとつ、歌を、わしに歌っておくれ」。樫の木はナイチンゲールにたのみます。「おまえさんがいなくなると、わしはほんとうにさみしいよ」。ナイチンゲールは樫の木のために歌います。その歌は、銀の水指からこぼれる水のあわの音のごとく清冽でした

ナイチンゲールが歌い了えると学生はたちあがり、隠しからノートと鉛筆を取り出しました。「型フォルムというものはある」。そうつぶやきながら木立を通り過ぎていくのでした「それは疑いない。しかし感情は? ないね」

She has form. このフォルムとはどういう意味か? これがわからない。原文がシンプルなだけに原文じたいに曖昧さがあるのはcannot be denied to it. (笑)逐語訳が珍妙でわらえる。「あの鳥には形がある。それはあの鳥にも否定できまい」(西村孝次訳)。そんなこと当り前やろ~。「あの鳥には形体がある。それはあの鳥にも否定できないだろう」(富士川義之訳)。富士川は、『無憂の王子』で「寝床の用意(preparations)はできてるかな」というツバメの台詞を「この町にいろんな施設があるといいんだがな」と訳した位の人なので、「形体」などというきみょうな訳語をもちだすくらいは朝飯前である。歌唱のスタイル、「型」くらいの意味で私はとった。それ以上はわからぬ

 

 

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