The Nightingale and the Rose(10)

「型フォルムというものはある。それは疑いない。しかし感情は? ないね。率直に言って、その他大勢のアーチストさ。あるのはスタイルだけで、真摯しんしさには欠けているのだ。他人のためにじぶんを犠牲にしようという清い心は、持ち合せてないだろうね。考えているのは音楽のことだけ。みんなよく知っている通り、藝術というものは自己中心的なのさ。まあ、声に美しさはあると認めるがね。しかしそんなものに何の意味が、どんな実益があるのか。そう考えると、かなしいね」

さんざんナイチンゲールの悪口を言ったあとは、じぶんの部屋にはいってしまうと、貧弱なベットに横になり、恋人のことを考え始めました。しばらくすると、スヤスヤ寝ています

夜空に月がのぼりますと、ナイチンゲールは薔薇の木に飛んでいき、乳房を棘とげに押しつけます。一晩中、ナイチンゲールはそんな責苦をうけながら恋の歌を歌い、つめたい水晶のかがやきを放つ月は、ナイチンゲールの姿を見ようと月影げつえいをかたむけ、その歌に耳を欹そばだてるのでした

一晩中、ナイチンゲールの歌いつづけるあいだ、棘はひとさし、ふたさしと、その乳房をますます深くさし抜いて、いのちの血潮はじくじくと赤く、胸からこぼれ広がっていきました

 

 

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