「私に残された目をくりぬいて、あわれなあの子にやってくれ。そうしたら打ぶたれずにすむだろうから」
「もう一夜ひとよ、わたくしは、お供いたします」とツバメ。「けれど、とてもそんなことは私にはできません。そんなことをすれば、王子さま、目がみえなくなってしまいます」
王子は優しくツバメに話しかけます。「ツバメよツバメ、ちいさき僕しもべ」。「わが命めいを受けておくれ」
ツバメは王子のもうひとつの目をくりぬき、広場めがけて一直線に急降下。マッチ売りの少女のかたわらを目にも止まらぬ速さでスーッと過ぎるや、宝石を女の子の掌てのひらに魔法のようにすべり落としました。「なんてきれいなガラス玉!」少女は大喜び。キャッキャッとわらって、家路を急ぎます
ツバメが王子のところに戻ってきました。「王子さまは目が見えなくなってしまわれた。かくなるうえは、ずっと私がおそばにお仕えします」
「いや、それはいけない」と王子。「そなたは埃及エジプトへ参らねば」。「いいえ、ずっと私がおそばにお仕えします」。そう言って、ツバメは王子の足元で眠りました。翌日は日がな一日、ツバメは王子の肩にとまり、異郷で見聞した話をお聞かせ申上げます
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