The Happy Prince(16)

「埃及エジプトじゃあ、あったかい日差がみどりのヤシの木を照らしていますよ。鰐ワニなんですがね、こいつらは泥のなかにじっとして、周囲を、おまえはどんだけ暇があんの、という感じでじーっといつまでも見てるんですよ。私のなかまたちはバールベックにある神殿で巣づくり。ピンクの鳩と白のはとが何してんの、とクークー言いながら様子を覗いてくるんです。ああ、王子さま、これで失礼します。忘れませんよ。王子さまのことは。それは決して。来年の春には持って参ります。王子さまが気前よくやっちまった代りになる宝石を。ふたつ、とびきり美しいやつです。真紅の薔薇よりも赤いルビーですよ。サファイアはエーゲ海の青に負けないくらいに青いやつを」

「眼下の広場をごらん」と王子は、語り出しました。「そこに、マッチ売りの少女が立っているね。側溝にマッチが落ちて、ぜんぶ水にぬれてしまったんだよ。少女が家にお金をもって帰らないと、父親が少女を打つのだ。それがこわいので、少女は声を上げて泣いている。少女は靴も靴下も履かずにはだしだ。帽子もかぶっていない。私に残された目をくりぬいて、あわれなあの子にやってくれ。そうしたら打たれずにすむだろうから」

バールベック寺院は、レバノンにあって、エジプトにはないのだが、ワイルドからすれば、文飾がすべてで、そんな地理的なまちがいはどうでもいいのだろう

the great seaは意訳して「エーゲ海」としてみた。そのほうが日本語では詩趣が増すようにおもうので。いかがだろうか?

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