「なんだって、春はいつまで経っても来ないんだ。わからん」。窓辺にこしかけてまっしろで冷たいじぶんの庭をみながら、こころの狭い大男はつぶやきました。「気候に変化が出ないものかのう」
しかし春は来ず、夏もまたそうでした。秋はすべての庭にひかり輝く実りをふるまいましたが、大男の庭には何一つあたえることはありません。「こころが狭すぎる人には何もあたえませんよ」と秋は言うのでした。大男の庭は北風、霰あられ、霜、雪の四人組が木々をふきぬけて踊るばかりで、そこはいつまで経っても冬のままなのでした
ある日の朝、大男はベッドにめざめてじっとしておりましたら、その耳に可憐な音楽が聞こえてきたのです。その音ねは蜜の滴るように甘美なもので、これはきっと国王の楽隊が行進しているのだなと大男は考えたほどでした。音楽の正体、それは、窓の外に啼く小禽ことりのリネットだったのですが、鳥の音ねを庭に聞かなくなって既にひさしく、大男には、この世のものと思われぬほどに、妙なる音楽と響いたのであります
大男の頭上におどる霰あられはにわかに足をとめるや、北風も吼えるのをやめました。そのときです、なんともかぐわしい花の香が開き窓のすきまから漂ってきたのです。「とうとう、春がやってきたのだ」。大男はベットから飛起きて、外を見ました
息子「う~ん。the Selfish Giant. ここはお父さんの例の訳、ひとりじめする大男では、うまく行かないんじゃありませんか。あんなに大威張りしてたのに、ダメじゃん」
父「これはしたり。いかにもそうだ」
む「しかし、意地悪な大男というのもあまりピンと来ないし、かといって、わがままな大男というのも、どうですかねえ」
父「そうだろう」
む「だからselfishの意味をようく考える必要があって、作者のワイルドがこの言葉にどのような意味をこめているかがポイントなのでは?」
父「そうだ。そこで、ワイルドの性格を考える必要がある」
む「伝記には、ナニナニ、ワイルドは贅沢三昧、金を湯水のように使う人だったとあります」
父「ま、寛大ということなんだな。じぶんにお金がなくても、かわいそうな人があれば、もっているだけ、お金をあげたらしいよ」
む「寛大すぎる!」
父「ワイルドは、人はみんな寛大な人であってほしいという理想というか期待があったのではないか知ら。その象徴がここでいう、秋だ。だからselfishというのはその反対で…」
む「こころが狭い。なるほど! ちゃんと文章のなかに答が書いてあります!」
父「そういうことだったんだナ。アハハ」
む「大男なのに、心がひろいどころか、狭い」
父「なんか正反対の可笑しみがあるよね」
む「ワイルドは皮肉を言うのを好んだ人とも、伝記にはあります。だからThe Selfish Giantの正しい訳は…」
父「こころのせまい大男」
む「アハハ! わらう~」
備忘)大男総身に智慧が廻りかね
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