ツバメはピョンと室内に入るや、ルビーの大玉を、卓テーブルの上、お針子の指ぬきの傍に置きました。つぎにそっとベットの周りをぐるぐる羽搏ばたいて、男の子の額にすずしい風をおくって遣ります。「ああ、なんとひんやりして、きもちのいいこと」。男の子は微笑みました。「きっとよくなるんだ」。たちまち男の子は黄金のまどろみに包まれていきました
ツバメは無憂の王子のもとに戻り、以上のことを申上げます。「妙な話なんですがね」とツバメ。「なんだか体がぽかぽか、あったかいんですよ。こんなに寒い日だっていうのに」
「そのわけは、ツバメよ、なんじが善事を成就したからだ」と王子。ツバメは王子の言葉の意味がわからないものですから、首をかしげて考え始めたのですが、そのままスルスルと眠りに落ちてしまいました。ツバメは考えごとをするときまって眠くなるのです
夜が明けるや、ツバメは川辺に降り立って、水浴びをしていますと、橋の上から通りすがりにそれを見た鳥類学者が、「稀代の珍事だ」とさけびました。「冬にツバメがいる!」 鳥類学者は、地方新聞に長文の投稿を寄せました
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