小野リサやジェネット・ザイデルも歌っているのが、この “Smile” というスタンダード・ナンバー。
とてもいい曲です。
有名な曲のはずです。
どこかで聴いたおぼえがあります。聴いていないはずはない。
しかし思い出せない。
たぶん何か大ヒットしたドラマか映画の曲のはず。
そう思って、思い出そうとしますが、やはり思い出せません。
ずっと思い出せず、やむなく観念。
昨日、とうとう調べて、そうか、チャップリンの『モダン・タイムス』の映画音楽だったのですね。しかもチャップリン自身の作曲。
ついでに『モダン・タイムス』をひさしぶりに観ましたら、おおいに笑っておおいに泣ける、名作です。
工場労働者のチャップリンが機械労働の非人間的過酷さから一時的に気がふれたら精神病院に入院させられたり、赤旗をまちがって振ってしまったらストライキの指導者と誤解されて刑務所にぶちこまれたり、苦労をしながらみなしごになった少女と二人希望をもって生きていくというストーリーです。世の貧困と不運を描き、富の豊かさへの願いと希望の大切さを説いています。
時代は1936年といいましたら、世の中、「アメリカの平和」がずっとこの方続いているので、にわかには信じられないでしょうが、アメリカにおいてもロシアでおきたような共産主義革命がいつ起きても全く不思議ではない時代だったのですね。当時アメリカ政府は軍隊を導入してまでストライキや労働運動を大弾圧しまくっていたわけです。教科書でなんとなく、フランクリン・ルーズヴェルト大統領によるニュー・ディール政策とか高校生はみんな習っているはずですが、その意味の重大性は理解されていないのではないでしょうか? このままでは限界とルーズヴェルトは、労働運動への弾圧をやめ、思い切ってソ連の政策を大胆に取りこむことで、一国の危機を救ったわけです。
労働運動を思い切り弾圧しまくっていたアメリカの資本主義者たちは、しかしその後もおとなしく黙っているはずはなく、1980年代になり、ロナルド・レーガン大統領をあやつり人形にして、ルーズヴェルト大統領時代にできた資本主義にとっての手かせ足かせをどんどんはがしてかかり、貪欲の追求に余念がありません。これを学者たちは「新自由主義」と呼んでいるそうです。
その負の側面を知るには、『ウォール街』(1987年、オリバー・ストーン監督、主演マイケル・ダグラス)、『キャピタリズム』(2009年、マイケル・ムーア監督)、『21世紀の資本』(2019年、トマ・ピケティほか出演)などを見るとたいへんわかりやすいと思います。私の生きてきた時代感覚からみても、これらの映画で言っていることは真実だと思います。
問題は、まじめに働いているだけでは報われない時代になってきているということです。『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』(2013年、マーティン・スコセッシ監督)で主役のレオナルド・ディカプリオは、自分の不正を暴き立てにきたFBI捜査官に鼻薬を利かせようとして、国のエリートになってみたって、思い切ったぜいたくのひとつできないじゃないかというせりふを吐くのですが、これは悪態というよりは、真実です。
庶民レベルでも、むかしは郵便局に定期預金しておけば高金利のおかげで孫にやるお小遣いくらい不自由しなかったのに、いまは銀行に頼れないから、かたぎの人間なら決して手出ししてはいけないと言われてきた、あの株をやれと国が国民にすすめる時代です。老後の2000万円問題なんかでさわぐない、積立NISAで解決できるだろというのが政府の考えです。たしかに国民も企業もお金を貯めてばかりで世のため人のために外に循環させない日本の「動脈硬化」が経済的停滞と貧困をじぶんで招いている面はあり、安倍政権がやってきたことが悪いばかりではありません。
いかさま(金融証券取引)をうまくやるのが利殖の便法とは、本多静六先生以来、昔からの真実とはいえ、しかし、なんだかなーという思いもぬぐえないのが小医の正直なきもちです。
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