The Happy Prince(20)

町あるきを楽しむ大人はみな毛皮のコートを着て、ぬくぬくとしています。少年たちは真紅のキャップをかぶり、氷上にスケート遊びをしているのでした

あわれ、ちいさきツバメは、からだの芯から冷えていくいっぽうですが、王子のもとから離れようとはしません。あまりにも王子のことを愛していたからです。ツバメはパン屋のドアの外におちているパン屑を、パン屋が見ていないあいだに拾って食べ、翼をパタパタ動かしてせいぜい体をあっためようと甲斐なき努力をするのでした

しかしとうとう、ツバメもじぶんの死期を悟ったのであります。もう一度王子の肩の上にとまろうと、さいごのちからをふりしぼりました。「おわかれです。王子さま」。彼は聞えるか聞こえないかの声でつぶやきました。「お手に口づけすることをお許しください」

「やあ、とうとう、埃及エジプトへ行く決心をしたのだね。わが僕しもべよ」。王子は門出をよろこびました。「思いのほか滞在が長引いたからね。しかし、口づけなら、どうか私の唇にしておくれ。私もそなたを愛しているのだから」

『幸福の王子』の物語を読んで、こども心にも、王子こそひどい悪人ではないかと疑わせるのが、この場面のようですね。いろんな人に訊ねてみたら、みんなこの場面で、王子に怒りを覚えた、というので笑いました。たぶんワイルドもじゅうぶんそのことはわかっていたのではないかと思います。善と悪は紙一重のところがありますから。そこを救うのが「愛」で、kissが、この場面にある矛盾をすべて棚上げしてしまいます。私がこの物語をはじめて読んだのは、おそらく2年前で、こういう童話があることも知らなかったのです。まづいまづい日本語で読んだので(訳者じしんは「渾身の力で訳した」などというからあきれますが)、なんの感興もわきませんでしたが、英語で読むと、なんということでしょう、残るページが減ること自体惜しいと思うくらいに、味読いたしました

 

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