1970年代後半に中学生だつた私にとつて、ビリー・ジョエルは、ニューヨーク派の大スターでしたね。「オネスティー」といふ曲がココアのCMソングに使はれて、これでハートを鷲わしづかみされた人は、多いのぢやないでせうか? 1980年代まで英米ではカッコ良い歌手やバンドが多かつたですね。ポリスとかね。メン・アット・ワークとかね。とにかく、ヴォーカルの男らの声がワイルドで良かつたですね。
中学生になつたとき、いちばん私のハートを摑つかんだのは、バグルズ The Buggles といふテクノ・ポップバンドで、” Video Killed The Radio Star” は、何か私を「狂はせる」ものがありましたね。曲はシングルこれ一枚ぎりしか出さなかつたので、それ以上に「狂ひ」やうがなくなつてしまつて、残念でした。
YMOなぞは、あんまり私のハートには響かなかつたですね。哀愁がないからでせうね、やつらには。TOKIO, TOKIOと単語だけくり返されてもねえ。思想も何もありませんから(ナチスまがひの服装とインスタレーションでコンサートをしても、何のお咎めも受けなかつたのは驚異。いまなら道徳的大罪だらう)。
まあ、今ごろになつて「テクノポリス」などをよく聞きますと、ラヴェルの「ボレロ」のやうなくりかへしで永遠に閉ぢた自立的音楽構造(オルゴール?)になつてゐて、傑作だなと気づきましたが、坂本龍一の曲は映画『ラスト・エンペラー』の演目も同様で、そこが魅力ですかね(音楽については全く無知なのに、偉さうに云つてすいません)。
もうすこし英語の勉強をしておけばよかつたなと今ごろ反省しても遅いのですが、今晩も、私には癒いやしの作業となる訳詞をつけてみます。けふはひさしぶりにビリーが聴きたくなつて、四条通のJeugiaへ寄つて来ました。今も泣ける名曲です。
HONESTY まごころ
If you search for tenderness やさしさをおさがしですか
It isn’t hard to find それならわけなくみつかるでせう
You can have the love you need to live 生きるのに必要な愛情くらゐはね
But if you look for truthfulness だけど、まごころをさがそうとすると
You might just as well be blind この世は闇に沈んでしまつたも同然
It always seems to be so hard to give あなたにあげたくても永遠に無理かなと思へてきてしまふ
Honesty is such a lonely word まごころとは、げに、孤独な言葉
Everyone is so untrue だつて、みんなに余りにもまごころがないのだから
Honesty is hardly ever heard まごころといふ言葉を耳にすることがなくなつた
And mostly what I need from you だから何にもまして、あなたには、まごころある人であつてほしい
I can always find someone 同情するよ
To say they sympathize なあんて言つてくれる人はいくらもあるさ
If I wear my heart out on my sleeve こちらも胸襟きょうきんを開いてしやべればね
But I don’t want some pretty face しかし、きれいなウソをつく
To tell me pretty lies きれいな顔をした女たちなんて、私には要らない
All I want is someone to believe 私のもとめる人は、何より、まごころのある人なのだから
Honesty is such a lonely word
Everyone is so untrue
Honesty is hardly ever heard
And mostly what I need from you
I can find a lover 恋人なら見つかるだらう
I can find a friend 親友だつて
I can have security 経済的安定も
Until the bitter end だけど、にがい結末でおしまひ
Anyone can comfort me こんどこそ大丈夫さと
With promises again 私をなぐさめるなんて誰にでもできる
I know, I know そんなことはようくわかつてゐるんだ、骨身にしみてね
When I’m deep inside of me 私が深く沈みこんでゐるときも
Don’t be too concerned 深い心配はしないで結構
I won’t ask for nothing while I’m gone ボンヤリしてゐるときは何もほしくないのでね
But when I want sincerity だけど、わたしがまごころを求めてゐるときは
Tell me where else can I turn いつたいどこへ自分が足をむければいいのか教へてほしい
Because you’re the one that I depend upon だつて、私がまごころのある人と信じられるのは、あなたしかゐないのだから
Honesty is such a lonely word
Everyone is so untrue
Honesty is hardly ever heard
And mostly what I need from you
われながら、うまく訳せた方かなとおもひます。honesty, truthfulness, believe, sincerityは、同義語として使はれてゐるやうです。これらは稀少価値をもつので、lonely, hardly ever heardだと位置づけられてゐます。
対義語はtenderness, love, untrue, sympathize, lies, comfort, promisesなどで、これは世に満ち溢れてゐると考へてゐるやうです。loveに不信感を持つてゐるのが不審な感じがしますが、このloveは、男女の間の嘘いつはりを多く含んだなれ合ひの関係といふ意味あひなんでせうね。friendも亦同じ。誠実な友情といふ本来の意味あひではなく、なれ合ひの関係のうへに成立つニセの友情を指すのでせう。
mostly; above all
歌詞にはいくつか難所がありますが、上記の訳でだいたい、まちがひはなからうと思ひます。
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