The Nightingale and the Rose(8)

「えもいわれぬ甘き香りをはなつ花、それは山査子サンザシ。渓谷けいこくにかくれ咲くブルーベル。丘一面に咲くヘザー。ああ、この官能を思う存分に味わえるのも、生きてあればこそ。とはいえ、愛は、いのちを超えたものよ。鳥の心臓なぞ、人の心臓とは、くらべものにはなりますまい」

そう言い残すや、ナイチンゲールは、栗色のつばさを広げて飛翔し、天高く空に吸い込まれていきました

ナイチンゲールは庭をよぎること影法師のごとく、又、影法師のごとく木立を過ぎていきました

かの若き学生は、なお草むらに寝そべったままでいました。その美しい瞳にうかぶ涙に、まだかわく気配はみえません

「泣かないで」。ナイチンゲールがはげまします

「笑顔をみせて。きっとあなたに赤い薔薇をもたせてあげる。きょうの月夜に歌うから。薔薇のしろい花びらを私の心臓にながれる血潮で染めてさしあげる。おかえしに頂きたい私の望みは、ほんものの愛をあなたには知ってほしいということだけ。学問や権力、それはそれで大したものなのでしょうけれど、愛は学問よりもあなたに知恵を与えるわ。愛は権力よりもつよいものをあなたに与えることでしょう。愛のつばさは炎に染まり、からだもまた炎の色に染まっているわ。その唇は蜜のように甘く、その吐息からもれてくるのは、乳香のかおり」

Be happy. 「幸福におなりなさい」「幸せになってください」という逐語訳には唯哂わらうしかない

a true lover. ここも以前に講釈した通り。「本物の恋人になってください」では意味が通らない。以後も、西村と富士川はナイチンゲールの台詞を逐語訳するだけで済ましているが、いい年をした中年男が記す日本語とは到底おもえない

honey, frankincense. エジプトの異国情緒と共に、聖書と強烈にむすびつく言葉

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