秋の味覚

すこし寒くなつたからと言つて、日本から秋が少なくなつたとか、テレビがほざけば、大衆もほざく、バカな世の中になつたものである。大衆は何も考へないといふ好例である。

まだコートも要らないのだから、冬なんかであるものか。いつから日本の若者も、じゞばゞ臭いことを口にだして平気でゐられるやうになつたのであらう。もつとガイジンを見習へ。やつらは冬でも、肌をさらして平気である。寒気に肌を鍛へてゐるのである。日本にも幾分マチスモ(マッチョ思想)を導入する必要があらう。いくらタカ派がわめかふが、日本国憲法第九条を改正できる見込はつひになささうである。

秋の味覚といへば、何といつても、松茸といへる人は金持だらう。国産の松茸は、5~10万円もするが、これは異常としか言ひやうがない。お金の価値と見合つてゐないからである。買ふのは見栄以外のなにものでもない。アホらしいから私は買はない。買ふときはカナダ産でがまんしてゐる。それでもじゅうぶんに美味しい松茸ご飯は作られる。

梨。柿。葡萄。栗。秋刀魚。こんなことはAIがほざくことである。AIはバカなので、次にわたくしが推すものを、知らないやうである。わたくしは、なんといつても、銀杏ぎんなんを推す。

銀杏ぎんなんといへば、銀杏いちょう並木の東大を思ひ出すといえば、嫌みだが、それはウソである。わたくしは殆ど大学に通はなかつたから、思ひ出したくても、思ひ出さない。但し、本郷がこの時期、臭かつたのは憶へてゐる。中火位で15分も炙あぶれば、だいたい中に熱が通つてゐる。殻割で一つひとつ割つていく。うすみどりに綺麗に透き通つた粒がでてくるのを器に集めていく。根気の要る作業である。ぜんぶ剝き終つたら、藻塩をぜんたいに振つて薄くまぶす。うすはりのグラスにそゝいで、キンキンに冷えた麦酒のアテに、暖かみの残る、ぬくい銀杏を噛みしめ噛みしめ、いたゞくのは、幸福に似たものである。

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