国際政治は、しらない内に、大きな転回点に来てゐるやうだ。アメリカは、自国に近い領土はぜんぶ自分のものといふつもりなのか、ベネズエラを制圧し、キューバも転覆させようとしてゐるが、こんどはデンマーク領のグリーンランドを寄こせと言ひ出した。もつとも、これはかねてよりのトランプの持論らしいが。
付 カナダにも関税をかけて、それでカナダが持ちこたえられなければ、アメリカの51番目の州になればいゝとトランプは放言している。カナダのカーニー首相は自由主義と多元主義の価値を共有する国の協力関係を提唱してゐる。風貌、学歴、経歴、どれをとつても、立派すぎる人である。
これには勿論、西欧諸国が反撥したから、トランプは報復関税をかけると言つたので、西欧の株式市場は一時暴落、アメリカのニューヨーク市場も一時暴落した。しかし、トランプは、大統領職にあるといふのに、言を二転三転する男で、舌の根も乾かぬうちに、関税はやめたと言つたから(TACO; Trump Always Chickens Out. トランプはいつも腰抜け)、株式市場は落着いたが、国の信頼がゆらぐのは避けられないから、米国債は売り必至といふに、売ると只ぢや置かないぞと西欧諸国を嚇しつけてゐる。じぶんの蒔いた種だらうが、と思ふが、どうしようもない男である。ゲイのベッセント財務長官とやらも、アメリカの長期金利が上昇した(債券下落)のは日本も要因のひとつとか妙な因縁をかけてゐる。自国の財政悪化懸念を棚にあげて何をいふ。アメリカは「ならずもの国家」にならうとしてゐる。今年は1776年の建国から数へて250年といふのでパーティを開きたいのだが、在日アメリカ大使館は、みずほだか、三菱UFJだか、三井住友だか知らないが、その1つに4億円寄こせと言つて来てゐるさうである。ほかの大企業にも勧進帳が回る予定だとか。タカりである。100億円ほども集めるさうである。
付 日本国債も高市早苗の積極財政で消費税の2年停止があるから、売り→長期金利上昇と騒いでゐるが、もともと数字が小さいから大した問題ではない。
実際、多くの識者(インテリ)は国際政治の行末を案じてゐる。「G-1」(ジョゼフ・スティーグリッツ。G-1、つまり、アメリカぬきで国際政治秩序を築いていかざるを得ない)、「西洋なき世界」(秋田浩之)。わかりやすく言ひ換えると、「自由主義なき世界」である。現に、トランプは、国連の外で、アメリカを中心とした「平和評議会」といふのを発足させたが、賛同してゐる国は、みんな自由のない国(権威主義国)ばかりである。トランプは、ロシアのプーチンや、中共の習近平も大好きである。アメリカもトランプのやうな大統領が続けば、権威主義国へと変質するだらう。アメリカは「自由」こそが国是だつたはずなのに。自国中心主義(新型モンロー主義:ドンロー主義)をうちだして、アメリカは軍事負担を軽減、縮小したいと言つてゐる。西欧諸国は自前のNATO軍だけでロシアと戦へ、韓国も北朝鮮には自前で対峙しろ、日本は日米安保条約における経済的負担をもつと負へ(50%→100%)と言ひだしてゐるが、これは中共とロシアをのさばらせるだけである。関税の「壁」をつくつて自国産業を防衛したつもりでいても、どの途、ゆきづまればどうするのかね? その兆しはどうやら出て来てゐるやうである。
註。トランプがこれからものさばつて、日米安保条約は破棄すると一方的に言ひ出したらどうする? これを嚇しに、アメリカはさんざん日本に恐喝をくりかへす虞おそれなしとしない。
アメリカでも、こゝろある人びとは、国際政治の行末を当然あやぶんでゐるが、みなインテリである。これがよくない。トランプは共和党員でたいへんな金持である。ならば、支持基盤はふつうインテリであるはずが、トランプの支持基盤は、大学はおろか高校も出てをらない、1980-2000年代のグローバリズム(自由貿易)時代に国内製造業衰退のあをりを喰つて失業した、希望もなければ学もない底辺層なのである。アメリカの白人層、キリスト教者は、国内において少数派に転落してをり、かれらは被害者意識をもつてゐる。だからこそ、Make America Great Again(MAGA)といふ、ロナルド・レーガンから借りたキャッチフレーズが、底辺層の民衆(MAGA層といふのださうである)に響いたのである。
しかし、民主主義は「自由」の価値を知る者が国民の多くを占めるか、政権を担う層に多数を占めてこそ、意味ある政治体制となりうる。しからずんば、衆愚政治(最近では「衆愚」の言葉をはゞかつてか、「ポピュリズム」などと横文字にしてゐるが)に陥ることは由来示されてゐる。「自由」の価値は、おろかな大衆の暴走、それを煽るデマゴーグのまへには大きく毀損されてしまふ。トランプは正に大衆煽動家(デマゴーグ)である。それくらゐ、やつの顔を見ればすぐわかるだらうに、大衆はトランプのいふことが痛快であれば、それでいゝのである。
しかし、われわれは、英国の退屈であるがゆゑに信頼のおけるスターマー首相、フランスの知的エリートたるマクロン大統領、カナダのこれも知的エリートたるカーニー首相、このやうな人をかしらに置いてゐる国とかたく手をむすぶべきである。
しかるにトランプは、責任ある政治家といふよりも(実際、政治家としてのキャリアはゼロだつた)、自己顕示欲まるだしのTVコメディアンである。かれの放言やツイッターでやること、なすこと、児戯にひとしい。80歳のじゞいのなすべき言動ではない。真実とウソのごた混ぜに、あきれ果てるやら、胸がムカつく。それに世界がふり回されてゐる。どういふことなのだらう?
チャップリンが昔風刺したやうに、ヒトラーにもコメディアンのやうなところがあつた。おおげさな身振り手振り。不必要なまでに悲愴な絶叫。ヒトラーの支持層も、大戦後破壊された経済で逼迫してゐた民衆層であつた。
なにかいやな予感がしてゐる。
トランプはふたゝび命を狙はれることになりはしないか? 国内でも、トランプ政権の横暴さに眉を顰める人びとがさすがに増えて来てゐるやうにみえるのだ。銃社会だけあつてアメリカ大統領はつねに暗殺の危険にさらされてゐる。いちどだけでは済まないのではないか?
民主党をわたくしは好かないが、こんどこそは、人材を対立候補に出してほしいものである。





