うさぎの巣穴は、しばらくはトンネルのやうに、まつすぐ進んでゐましたが、進路は、だしぬけに下り落ちていきました。そのさまが余りにも突然だつたので、アリスは、じぶんが落ちていくのをとめる方法をかんがへる暇いとまもなく、気づけば、深い井戸かとみえるところを落下してゐるのでした。井戸があまりにも深いせゐからなのでせうか、それともアリスがあまりにもゆつくりと落下してゐるせゐなのでせうか、といふのもアリスには時間がたつぷりとあつたのでした、落下しつゝ周りを見回して、つぎは何が起こるのか、想像をめぐらしました。そこで最初にアリスがしたこと。それは下を見ることでした。何がやつてくるものやらと思つたからでしたが、ざんねんながら、地下は冥くらくて何ひとつ見えません。しかたがないので横をみますと、井戸の壁には食器棚と本棚が埋め込まれてゐることに気づきました。ここ、かしこに、地図や絵画もかゝつてゐます。アリスは、ゆつくり落下する途中で、つぼをひとつ棚からとりだしました。つぼにはラベルが貼つてあつて、うれしや「オレンヂ・ジャム」と書かれてあつたのですが、なんといふことでせう、なかはからつぽでした。アリスはがつかりです。落胆のあまり、つぼをそのまゝ投げ棄すてゝ遣やらうかと考へましたが、下にゐる人に当つて、その人が死んぢやつたりしてはいけませんから、何とかつぼを壁の棚に押込んで、戻しました。







