四条通をあるいていたら、人形をあつこうてはる、旧い、ゆかしいお店が一軒あると思います。
江戸時代に創業して、二百年はやってはるそうです。
それが田中彌さん。
店にはいって奥にひかえる中庭の緑の、きれいなこと。
あとでみたら、『京都坪庭』(光村推古書院、平成13年)という水野克比古氏の写真集にも、ちゃんと紹介されていました。
「市中の山居」とはこのことかゆう、すがすがしさです。
すぐ店先にある四条通の雑踏の喧騒を忘れさせてくれます。
午前の診療のあとは、そとに出て、昼飯を取ったあと、なにという目的もなく、まちなかをぶらぶら歩くのが、さいきんの小医の日課。
わたくしの診療所のしつらえは「京都」を旨にしています。せっかく、江戸時代から何百年と日本でいちばんお医者の数のおおい京のまちで開業をして、京都の歴史とみやびさを大事にしない法はない。京都にゆかりのあるものをたいせつにしようと思って、診療所の調度品のことを考えていたら、田中彌さんにフト吸い込まれ、ひとつひとつお人形をじっくり眺めているうち「この娘」と出会って、ひとめぼれ。お給料日を待って、勇んで迎えに行きました。
昔はそこそこあったと思いますが、お人形さんというものを家でも店でも見かけなくなりました。そんな世の風潮にあらがってみたいと、美人にはお金をかけるべし、背には牡丹の衝立も。
みなさん、これからも、よろしうお頼もうしまっせ。
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