或人に送るゲーテの言葉

烏丸通に面したイタリアンには、わたくしのよく行くQUATRO以外に、LOCANDA SENESE がある。目立たぬ端にあつて、地下に下りるところから、行きつけぬまゝであつたが、けふは或人のすゝめもあつて、這入つてみた。

結論から言はう。旨かつた。けふからはこゝを行きつけにする。パンも、スウプも旨く、パスタのほかに牛肉も食べてみたが、ぜんぶ美味であつた。QUATROは、料理人の兄ちゃんたちは全員いゝ奴ばかりなのだが、給仕に莫迦が多くて、不愉快な思ひをさせられることが数回あつたから、考へものであつたのだ。その点、LOCANDA SENESEはオトナの店で、満点である。

いま、わたくしは、ゲーテの『ファウスト』を読んでゐる。ゲーテの『ファウスト』は、わかものには決してわからぬ文学だと思つてゐる。老人文学である。老人に勇気と笑ひをあたへる文学だ。物凄くおもしろい。『ファウスト』については、また改めて詳しく書くつもり。いまは、LOCANDA SENESEをすゝめてくれた人におくる言葉を『ファウスト』から引くにとゞめよう(第一部「舞台の前曲」むすび)。

言葉のやりとりはもう沢山 そろそろ実行のほうを拝見といきませう 気分がどうの、なんて言つたところで何になります ぐずぐずしてゐる者に気分なんか現れつこはない 今日できなければ明日だつてできるものぢやない 一日だつて無駄に過ごしちやならないんだ 決心してまづできさうなことを敢然と たぶさをひつ摑まへるんです さうすれば決心した以上手離すことぢやない

 

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