世界の果てまで連れてって

さほど遠くないむかしに、生田耕作という京大の先生があって、その人は気骨のある人で、文学って何?と問われて、理窟じゃないんだ、この今あるつまらない、くだらない世界のことなんかまるで忘れてしまって、魂ごとぎゅっとじぶんをつかんでどこか知らないゆめの世界へとしばし連れ去ってくれる無上の経験をあたえてくれる本が私にとって文学とよぶに値するものなんだと、読んだ記憶があって、私はこの答を諒としている一人なのである。

文学の話は置いて、きょうは音楽の話で、このLilofeeというエドガー・クネヒトのジャズ・ピアノ曲がきょうの私にとってじつに名曲だという話。

最初のひびきをすこし耳にしただけで、ああ、これはと、しびれてきます。

映画は、それを創る人の才能からして、世の人の重く見たがる悲劇よりも、世の人が不当に軽くみくだす喜劇のほうが天と地のちがいほどに優れて勝ると思うが、曲は哀しければ哀しいほどに上々と思われる。いったいに、私はかなしい曲しか好きにならないほどに、かなしい曲がすきなのである。くりかえしくりかえしなんどもなんどもしつこく聴いて、たましいをその世界にひたらせ、自由な伸びをさせてやり、この世のうさを忘却の水に流させてやるのである。

 

 

 

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