『がまくんとかえるくん Frog and Toad』(アーノルド・ローベル著、1970-79)。
日本でもこどもに人気のある絵本らしいですね。この絵本は読んでいて、ほんとうにこころが和みます。完璧な「ワールド」があって。がまくんとかえるくんの友愛が全編満ち満ちています。
この絵本は全部で20話あるのですが、その第2話「The Story」には大爆笑しましたので、全訳してみます。
おはなし聞かせて
夏のある日。かえるくんは体調をくずしました。「かえるくん、顔色が、かなりグリーンに見えるんだけど」とがまくん。「だけど、ぼくはずっとグリーンさ」とかえるくん。「だってぼくはかえるだもの」。「たとえ、かえるにしても、今日はとってもグリーンに見える」とがまくん。「ぼくのベッドに入って、やすみなよ」。
がまくんはかえるくんに熱い紅茶をいれました。かえるくんはそれを飲み、言いました。「ぼくがベッドでやすんでいるあいだ、お話をきかせておくれよ」
「よし来た」とがまくん。「きみに聞かせてあげるおときばなしを考えるよ」。がまくんは必死で考えました(thought and thought)。だけど思いつきません。「そとの玄関にいって、歩いてくるよ」とがまくん。「行ったり来たりすれば、思いつくだろうから」。がまくんは長いこと、そうしていましたが、思いつきません。
がまくんは家にはいってきてさかだちをしました。「なんでさかだちなんかしているの」とかえるくん。「さかだちしたら、おとぎばなしが思いつくかなあと思ってのぞみをかけているのさ」とがまくん。がまくんは長いことさかだちしていましたが、思いつきません。
がまくんはコップに水をくんできて、頭にふりかけました。「なんで水なんか頭にふりかけているの」とかえるくん。「頭に水をかけたら、おとぎばなしが思いつくかなあと思ってのぞみをかけているのさ」とがまくん。がまくんは何回も水を頭にかけていましたが、思いつきません。
がまくんは頭を壁にうちつけ始めました。「なんで頭を壁にぶつけているの」とかえるくん。「頭を壁にガンガンぶつけたら、おとぎばなしが思いつくかなあと思って望みをかけているのさ」とがまくん。
「いまはだいぶこころもちもよくなってきたよ、がまくん」とかえるくん。「だから、もうおとぎ話はいいよ」。「じゃあ、ベッドから出て、ぼくをやすませておくれ」とがまくん。「ぼくのほうが今や病人だから」。「がまくん、ぼくがおとぎ話をきかせてあげようか?」とかえるくん。「たのむよ」とがまくん。「ひとつ知っているのがあったなら」
「むかしむかし」とかえるくん。「ふたりのなかよしがありました。かえるくんとがまくんです。かえるくんは体調が悪くなり、友人のがまくんにおとぎばなしを聞かせてくれと頼みます。がまくんは話が思いつきません。玄関口を往ったり来たり。でも思いつきません。逆立ちをしてみます。でも思いつきません。頭に水を振りかけてみます。でも思いつきません。壁に頭もぶつけてみますが、それでも思いつきません。がまくんは気分が悪くなったと言い、かえるくんは体調が回復したので、がまくんがベッドに入り、かえるくんは起きて、がまくんにお話をしてあげました。おしまい。これ、いい話だろ? ねえ、がまくん」
がまくんは返事をしませんでした。だって、もうすやすや眠りに落ちていたからです。
ちかいうち、医学的観点から、このお話を分析してみようと思います。現実はかなり深刻な話にもなることを、やさしく平たく示しているこの一編のすばらしさに気づいて、ここに紹介しました。
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