最近書いた、「東京日本橋、三越百貨店の思ひ出」には、大きな反響があつて、喜んでゐます。図に乗るといけませんが、最近、百貨店の店員は、みんな派遣社員なのださうですね。そら、アキマセンわ。
「メッサーザイテ」も含めて、笑ひと哀しみとが入り混じつてゐて、よかつたと。
オシャレで知られた漱石は、資生堂に行つて、香水や石鹼を買ひ求めるエピソオドを、よく小説中に書いてゐますが(『それから』『門』など)、けふは、石鹸がきれたので、一ッ上等なのを買つて遣らうと、昔いちどだけ、プレゼントに貰つて使ふ機会のあつた英国製のブランドを思ひ出して、買ひました。一箇4500円! と聞いて驚愕しましたが、まあ、高すぎるのは承知で、物は試しと、一ッ購ひました。
peonyの意味は知つてる? と尋ねたら、「芍薬です!」と答へられるだけ(但し、芍薬に本来香はない筈なので、薔薇と掛け合はせたものか)、勉強はしてゐる若い娘が店員でしたが、こゝで、今頃? と言はれさうな「暗い発見」をしてしまひました。
附記)映画『ラスト・エンペラー』の冒頭、西太后が没するシーンに、西太后が3歳の溥儀に話しかけるシーンがある。西太后のベットの裾に愛玩犬がをり、次のやうな科白がつゞく。” This is Peony. Do you like her? And you know Man is not allowed in the forbidden city after dark. Even a little man like you! The only man can live here is an Emperor. But the Emperor is on the high riding the Dragon Road. He died Today!” 芍薬(牡丹)は花の宰相(王)。西太后の傍にはべる犬の名前にPeonyはいかにもふさわしからう。
ふと気づくと、髪をベージュ・ピンクに染め、目は美容整形でパッチリの、双子かと疑ふ二人組女子が、店に這入つてきたのです。ブーツにミニスカートの「野蛮」ないでたちは勿論、YSLなど、ハイ・ブランドの紙バッグを肩からいくつもぶら下げてゐる「下品さ」も負けてゐません。這入る店、間違へてるんぢやないの、とわたくしは思ひましたが、店員はいたつて普通の顔付で、もう慣れつこのやうです。この娘らの高級?趣味を支へる経済力は、一体いづこから来るのだらう? と想像をめぐらせたときに、わたくしもボンヤリしてゐたものです。ハタと気づきました。
こんな娘どもにeasy moneyが入る商売など、どんな商売か、知れ切つた話です。こんな人造人間みたいな小娘どもにつまらぬ金を落す男たちがあるかと思へば、汚い金を拾つて平気なこんな小娘どもにも「お客様」として接遇しなければならない店員の気疲れをかんがへると、さぞかしと思はれたことでした。
高級ブランド店。
店は何を売り、客は何を買つてゐるのでせうね?
なかみは決して上等なものではないやうです。ハイ・ブランドの店は、客を選ぶべき店の筈ですが、お金さへあればそれは客だといふのなら、そこは何かを得るよりも、大事な何かを失つてゆく場所になつていく。
刑事とヤクザが似通つて来るやうに、かういふ店の店員と客も互に似通つてくるかも知れません。魂に腐臭を纏まとひたくなければ、淫売と成金以外は、立寄る価値のない場所、といふのが理性的結論でせうね。






