御礼(3)

ガラス器は、その昔、シルクロードを西から渡つて来たものと聞いてゐます。そのことをおもひだすのに適当なのが、大衆的にも有名な、つぎの漢詩。詩人の王翰おうかんは8世紀前半、唐の人。「涼州詞」といふのはメロディーの名前のひとつで、「涼州詞」といふ題のついた漢詩は無数にあるとのことです(一海知義『漢詩入門』岩波ジュニア新書、1998年は類をみない名著)。涼州は西域にある砂漠で、遊牧民族との戦闘地帯です。

涼州詞 王翰

葡萄美酒夜光杯 葡萄の美酒、夜光杯 (真紅の美酒を、明輝光るこのガラスの器に受けようぢやないか)

欲飲琵琶馬上催 飲まんと欲すれば、琵琶びわ、馬上に促うながす (杯を廻らせよといへば、馬上の楽人が琵琶かき鳴らし、気分を盛立てる)

酔臥沙場君莫笑 酔ふて沙場に臥すも、君、笑ふなかれ (酔余砂漠に我臥すとも、君、笑ふてくれるなよ)

古来征戦幾人回 古来征戦、幾人か、回かへる (古来戦争に出て、何人命ぶじに帰つてこれたといふのだ)

詩にうたはれた「夜光杯」といふのが、ビイドロ(ガラス)の器。ではないといふ説もあるが、ふつごうな事実は無視。(笑) ところで、弊院に用いてゐるガラス花器はすべてがPONTE Glassblowing 製(祇園南側)。ご店主の佐藤聡さんが八瀬の工房で、文字通り、全身のちからをこめて吹いて、ガラス器を製造してゐらつしやいます。

小医の退院をよろこんでくださつて、娘さんが、「いいかんじ」のぬひぐるみを作つてくださつたの(私へのかわいいお手紙付)を、奥さまが過日かじつの夕刻、弊院に届とどけに来てくださいました。お相手をする時間が所用あつて殆ほとんどとれずになつて仕舞しまひ相済あひすみません。こんど、例の硝子茶盌がらすちゃわん(銘「銀河」)を使つて御茶一服いっぷくて参まゐらせますので、ぜひあそびに来てください。ぬひぐるみは受付のちかくで四葉のクローバーを手にニコニコしてをりますので、みなさん、愛玩あいがんしてあげてください。

 

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