予告

詳しいことは、将来に錄す、スコラ哲学(2)でも再説する積つもりだが、小医は、moral なんぞはかろく見て、たゞ truth に重きを置いて、診療してきた。これが scientist の態度だと信じるからである。医者が scientist の一種であるならば、これに反対できる医者は、ひとりもいるはずがない。この一線を外せば、医者は医者でなくなつてしまふからである。

moral といふのは、甘言のことである。世間が甘やかすから「病気」に逃避する弱者が増える。さういふ奴は、厳しい私に悪口をいふ。しかし私はかういふ連中と喧嘩をしない。truthにたちとゞまる良識と勇気ある患者がキットあることに信頼するからである。だからわたくしのクリニックは、Googleといふアメ公サイトの評価で、賛否両論に二分されてゐる。しかし、これがむしろ健全なのである。自由な言論があるからである。わたくしは何より自由を愛する。

すべての人が絶賛なんて、そんなことがうれしいなら、共産国へ行け。ロシア、中国、北朝鮮。こゝではみんなが口をそろへて絶賛だ。だけど、自由なんかないぞ。

さいきん京都市内には、バイトの精神科医を大量に雇つてひたすら金儲けにだけ邁進する資本主義クリニックが増えてきた。カール・マルクス Karl Marx ならずとも、これを嘆かずにをられようか。

只にわたくしの私見ではなく、精神科医(心療内科医)などといふものは、内科医を落第した連中である。医学部の成績は致命的に悪い。勉強などすこしもせずチャラチャラ過ごした連中ばかりである。医者になつても碌に働きもしない。わたくしは、若ければ、外科医をめざしたであらうし、或は内科医ならば白血病をやつつける血液内科医になつたであらう。それ位、精神科医といふものを軽蔑してゐる。

附記) 面白い話を書くと、総合病院内で、整形外科医と精神科医は、専門に扱ふものが、硬い(骨)と柔らかい(こころ?)の差があるせゐか、一般に、仲がとてもよくない。情緒不安定娘が飛び降りで足やら骨盤やらを骨折するせゐである。わたくしの勤めてゐた病院では整形外科部長が、たいそう精神科部局全体に当りがいつも悪かった。しかし、或時を境に、態度が急変したからオドロキである。整形外科部長の奥さんが軽度ならざるうつ病になったのである。われわれ4人は常に最敬礼を受けるやうになつた。(笑) しかし、一般に内科医は精神科医をだいたい軽蔑してゐる。看護婦からしてさうである。

しかし、わたくしは、じぶんの才能といふことを考へて、血液内科医にもならず、病理医にもならず、皮膚科医にもならず、精神科医になることを選んだ。その才は早くも高校2年生の時に自覚した。加賀乙彦の小説『フランドルの冬』を読んで、これなら乃公おれでもできるだらうと直観したのである。しかし、こんなチョロイ商売をしていゝのか知らと思つたから自制したくらゐなのである。神戸大学内で精神科を志望する連中の言動をみても、こんな連中とは同じ仲間になりたくないと心底思つたことも慥かである。

尤も、つけ加へておかないといけないが、精神科医には、すごくできる秀才もある。だから、精神科医には、出来・不出来の差がたいへんに大きい。しかしアルバイト医に限つては断言していゝ、産業医の大多数と同じく、かれらはクズである。これは私の経験に基づいて言つてゐるのである。わたくしの偏見とおもふ人はさう取ればいゝし、すこし考慮に入れようと思ふ人は頭に入れるといゝ。たれもこんな正直なことをいふ医者はゐないから。

わたくしも京都市中京区で開業して8年半が過ぎた。その思ひ出記として、ひさびさに「病気の説明」を幾つか書く。昔むかしに書いたわたくしの「病気の説明」は、弊院を受診する患者さんにも、弊院を訪問する製薬会社プロパーにも好評であつたし、そこから紹介を受けた製薬会社主催の講演者のお偉い先生方にも、好評であつたと聞く。わたくしは筆が立つ。だから当然である。自慢してゐない。客観的にさうだから、さう言ふ丈である。

こゝで開業して、認識が特に深まつたのは、①適応障害、と②クレプトマニア(万引)、盗撮、ひったくりの2種である。①に伴つて軽いうつ病がある場合がたまにみられた。①と②について、別稿で錄すことを予定する。

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