七転八倒

『大学への数学』10月号「学力コンテスト」ですが…

初見で、1番2番はどうでも解けると見切り(実際簡単だった。阪大を除く旧七帝大の入試問題レベル)、3番がどう見ても、鬼門。問題文もたつた2行。しかも解くには情報があきらかに「1つ足りない」という印象。

3次方程式の問題といふのは、2次方程式の問題よりも、数段レベルが高いのは、歴史的事実なのです。人類の歴史上、古代バビロニア・エジプト、古代中国、古代ギリシャ、インド・アラビア圏の数学は、確かに高度とはいへ、所詮、2次方程式を解く、までのレベルで、3次方程式をどう解くかは、16世紀にイタリアのカルダノの出現を待つ外はなかつた。以後、数学は驚異的ともいへる飛躍的発展を遂げるのですから、16世紀までの世界とそれ以後の世界は、大きな分水嶺で区分けされてゐる。

問題を解くのに、そんな大げさな数学史の知識はどうでもいゝのですが、勉強した以上は書きたくなるので書きました。

サテ、これをどうやつて解いたらいゝか?

αが虚数解(a+bi, a,bは実数)の可能性はないか。それはない。αが虚数解としてあるなら、a-biも方程式の解になるのですが(p,q,rが実数のとき)、さらに1/1-αも虚数になり、3次方程式が3つも虚数解をもつことはないので(3解のうちすくなくとも1つは実数解)、αは実数。

αと1/1-αは均しくなることがないので、方程式は相異2実数解をもつとわかる。こうなると、残るもう1つの解も実数解。方程式は実数解を2つか3つもつ。残りの解をβとおくと、解と係数の関係で

α+1/1-α+β=-p      α/1-α+β(α+1/1-α)=q     αβ/1-α=-r

が成立つのですが、こゝから先が二進も三進もすゝまない。問題文をみると、αは具体的な数字が出るごとくですが、その気配はまつたく見えず。ゆゑにqをpだけであらはす展望も開けない…。

1週間以上、のたうち回つて、降参。白旗。ほんたうに腹たちますねえ。これは京大レベルかな? これだけ苦しめられると、生涯わすれられない問題となりさうです。この問題のせゐで、心身ともにだいぶ痛めつけられました。数学はからだに悪い学問です。

 

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