ローストビーフってねえ。…料理なのか知ら? たぶん、料理とは呼べない代物。
青椒肉絲(チンジャオロース)だつてねえ、北京師範学校を卒業されて料理研究家をなさつてゐる、ウー・ウェンさんは、そんなの家庭料理過ぎて、料理とは呼べないわと言つてをられるから、ローストビーフだつて、イギリス人には、キットさうなのよ。だけど、レシピを書いてみるわ。
絶賛は受けても、まづいと言つた人は今までゐないから、書く価値はあるのかなと思つて、書いてみます。
どこの牛肉屋で買つてくるか、これがだいじね。日本人は松坂牛とか、脂のサシの入つたものが旨いといふ、いはれなき「サシ」信仰をもつてゐるけど、もういゝ加減そろそろやめなくちや。マグロだつて、トロ、トロ、ありがたがつて言ふけど、戦前、あれは下品と言はれたもので、私も齢をとつてトロはもう沢山。胸がわるくなる。
マグロと同じで、牛肉も、赤身がいちばん美味しいと思ふやうに。東洞院通にある「八百一」というスーパーに「いづつや」といふ牛肉屋が入つてゐるから、そこで私は赤身を一キロ塊で買つてゐる(13000円位)。五百グラムでもいゝ。いづれ二百五十グラムが焼く際には手ごろな大きさなので、二つに切ればいゝ。私は四つに切つてゐる。
息子が胡椒をきらいなので、私はふらない。塩だけで十分。立方体の六面にすべてまんべんなく薄く振る。フライパンに強火で、六面しつかり焼く。焼く前、或はそれをしながら、生姜と大蒜にんにくをすりおろして、ガーゼに包む。いづつやでローストビーフ用のソースが売つてあるから(1袋40円位)、それを三つ四つ買つて、コップに取る。上からガーゼを絞る。しぼり汁のみ濾こして取るのがコツ。ソースの香りづけないしコク増しになる。
四つの肉塊に十分焼き目がついて、火が通つたら、日本酒を適量ぶつかけて、蓋をして蒸す。お酒は日本酒がいゝ。私は伏見のお酒「玉乃光」がお気に入り。ある程度時間が経つたら、蓋をとつて、湯気がおさまつたら皿に取つて、上記のソースをかける。あとはフォークとナイフを巧みに使つて切り分け、牛肉の滋味を味はふだけ。
みなさん、だいたい「う~ん」とうなります。…至福のひとゝき、ですよ。


お皿はマイセン。カトラリーは、クリストフル。高価な食器や銀器こそ、普段づかひしたいもの。さうでなければセンスといふものが磨かれることは決してないのですから。近い内、フランスの伯爵夫人にまなぶ、エレガンスといふもの、について、ご紹介したいと思つてゐます。






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