もうかれこれ11年まへ(2014年8月17日)に書いた記事。再録。6歳の誕生日をむかへた息子が写るタイトルの写真は、知る人ぞ知る、四条通おく、八坂神社ちかくにある「石」2階にあるラウンジ喫茶。時間が昭和で停止してゐる空間です。老若男女がつどへる場所で貴重です。かういふ店があると、いかに今はやりの店が世代の分断を助長するやうにデザインされてゐるか、よくわかります。悪意のかたまりといつても言ひでせう。わからない人は鈍感すぎます。わたくしは何必館に寄つた後、こゝでぼんやりすることが多いです。
京都でいちばんのお料理屋さんゆうたら、まづ指を屈するのが、菊乃井さん。
有名やから、はよから予約せんと、ようお座敷とられません。
高台寺のいちばん奥、竹やぶにかこまれた所にひつそりと隠れたはります。
きぶんよう、お座敷に案内されました。なんともいはれん、えゝお部屋です。
清潔。
ほんで、すゞし~。
息子もにこにこ、喜んでをります。

「あ、お庭もあるう~」

この日は、まもなく、雨がしとしと降り出し、静寂がいつそう際立つて、よい雰囲気になるのですが、猫が一匹、ゆうゆう、このお庭を横切るのを見たのが、ゆかいな「事件」でした。(ちなみに立派な黒猫でしたが、不吉とは別に思ひまへん。「あ、猫ォ~」と息子はかへつて喜んでをりました)
仲居「えらい、おイタを、致しまして…」
…ちゆうてもねえ、猫は自由きまゝやし。(笑)
この日は息子六歳の誕生日。「壽」のお軸をかざつて下さいました。さすが菊乃井さん。

御料理のまへに、なますとお赤飯が、お祝ひに。

すつぱいのが嫌ひな筈やのに、ひとくち、「おいしい!」と。「お赤飯も、めっちゃ、おいしい」とぱくぱく。

お献立は、先付がいちじくの白みそ煮。菊乃井さん、お得意の料理です。おとなには美味でしたが、息子にはNG。どうやら小供むけではなかつたやうです。
八寸は色あざやかなほうづきの袋のなかに、いろいろ珍味が入つてゐるのも菊乃井流。私的には、十月でしたか、赤坂で頂いた、秋の虫かご仕立に出てきた八寸のメニューの美味しさが今に忘れられません。向付にはおほきな蓮の葉に、花びらも添えて、鯛と太刀魚、鱧のおつくり。
蓮の葉に花びら添えて出すのは、この季節の風流で、三歳の誕生日を京大和で祝つたときも、さういへば出てまいりましたわ…。かうゆうのも、かうゆうところに、いつぺん来てみな、わからんことです。
むすこは太刀魚の焼霜が旨いと、こゝでは、通人のやうなことを言ひました。(笑)
次は、まあるい賀茂茄子の蓋物。海老のつくねだんごが入つて、スウプが絶品美味とママが大賞賛。まへに食べたときは丸ごと賀茂茄子を、中身をくりぬいて使うてはりましたが、最近は、蓋はほんものの茄子ですけど、下の器は、茄子色の陶器を特注でつくらはつたさうです。はゝあ…。
息子は海老のつくねだんごがエライ気に入つてました。
そして焼物。むすこのためには、おかしらつきの、にらみ鯛。
こゝで女将があいさつ。「坊ちやん、白ごはん、食べますかあ?」と、持つて来てくらはりました。息子はおほいにパクパク。鯛がすきな子で、京大和のときもごつつい食べましたなあ…。
「うわ! 坊ちやんのお服。こんなん、よう見たこと、あらしまへん。なにや、お誂ひなさつたんですかあ? キットさうですわなあ…」
…お世辞でも、わたくしのした誂へを見立てゝくれた女将に、わたくしは内心、感謝感激。にくい女将どす。(ニコニコ)

下の写真は三歳の誕生日の時のもの。(京大和で)


ちなみに、つぎは四歳の誕生日の時のもの。このときは宮川町のとし純さん(当時16歳)が舞妓さんで(右端)、花咲にきてひさとし舞つてくらはりました。息子も写真撮影にまんざらではなかつたやうです。

あとはアワビやら、おつきな氷のひやし鉢に葛のそうめんがあつたり、また例によつて美味しい鮎飯など出て来て、おなかいっぱい。
「くるし~」
お客さんにはおなか一杯になつて、帰つてもらふ、ゆうのんが菊乃井のポリシーださうで、京都人ゆうたらケチやゆう、江戸時代以来の偏見(例、曲亭馬琴)をうちくだく、凄いうれしいおもてなしや、思ひます。
わたくしは最近牛肉がどうも好かんで、殆ど食べへんのどすけど、こゝで出たひれ肉のおいしかったこと。なにはともあれ、息子も大満足。


さいきんは「撮影禁止!」と写真を嫌ふのに、ニコニコ笑ふてくれました。
あとは近ごろ息子が凝つてゐる俳句大会。「夏休みいちばんのお店で食べました」…オハリ。息子はわたくしが言ひ出したこの「オハリ」といふ言葉が気に入つて、俳句をひねるたび「オハリ」を連発、終始笑つてをりました。
(ふしぎなことに、わたくしも幼少のころ「オハリ」といふ言葉を口に出してはよく笑つてゐた時期があつたのです。血は水よりも濃し…か)
来年は小学1年生。すばらしいお誕生日会になりました。食べ終つたらママに甘えておねむに。
菊乃井さん、ほんまに、おおきに、どした。
「菊」のちからで、料理おいしく、長生きできる。そんなちからが湧いてきた、感じです。
菊慈童の思ひに菊の枕かな 青木月斗




