(2)じぶんの「数寄すき」を軸に、試行錯誤するのよ
前回は「装い」について。今回は「住まひ」について。こゝでも、軸となるのは流行ではない。軸は、あくまでも自分の「数寄すき」の道。日本にはそんな、風流の道があると聞いてゐるわ。じぶんの好みを徹底的にじぶんに尋ねて答を出す。答はそこにしかない。他人は無責任な答しか言はないわ。
さあ、尋ねてみませう。あなたはどんな音楽、照度、香、色、藝術的趣味がお好き? アール・ヌーヴォー? デコ? ロココ? ジャポネ? シノワ? 少しでも気に入つたものがあれば、切取つてファイルに集めて置きませう(←これはギフト・コンシェルジュの裏地桂子さんもなさつてゐた。私も自分のクリニック作りにおいて秋田時代から『婦人画報』誌を切り抜いてゐたのが大層役に立つた)。
じぶんの好き嫌ひは、意外とじぶんでもわからないものなのです。じぶんのことなら全てわかつてゐると、もしお考へなら、傲慢ごうまん以外の何物でもありませんよ。
玄関は、外のいやな世界から帰還して、ホッと息をつきたいところ。だから照明は暖色系でまとめたい。寒色の蛍光灯ばかりの日本の家(さう聞いてゐます)の気が知れないわ。家具もアンティークの椅子を置いて、そこにいつたん、かばんや荷物がおけるやうにしたいもの。
居間(サロン)はフランス文化の華。美術館(ミュゼ)の雰囲気が出るやうにしつらへるのはどうかしら? すつきり優雅に。生活臭など漂つてゐてはなりません。日本では「ミニマリズム」とかいふ、ゼネコン美学とでもいふのかしら、安藤忠雄あたりにみんな洗脳されてゐるのかしら、さういふのに、老ひも若きもイカれてゐるらしいのだけれど、どれだけ「貧乏」に魂を譲れば気が済むのか、わたくしには気が知れませんわ。
サロンは、お気に入りの、すてきな壁紙で華やかに演出しませうね。どういふ色、どういふ柄を選ぶか、といふことを通して、サロンの「テーマ」といふものができますわ。サロンに合つた小物を蒐めることも、サロンに「~の間」といふ命名をすることも。統一感、それこそが美の基調ですわ。さうして、忘れてならないことよ、壁には必ず絵を飾りませうねえ。絵に合つた額縁を選ぶことも大事です。日本人は美術館に足をはこぶ人がたいそう多いと聞いてをりますけれど、そのうち、いったい、どれ位の方がお家に絵を飾つてゐらつしやるのか知ら?
ウチの嫁ときたら、壁紙と絵の取合せのことも考へず、もしかしたら、絵を飾ることも考へずに壁紙を選んでゐたやうだつたから、推して知るべし、絵を購入するなんてことは、考へること、ゼロ・パーセントに近かつたんぢやないか知ら。だけど、自宅にオリジナルの絵のひとつも持たない人が、美術愛好家だなんて、ちやんちやら、をかしいわ。じぶんの家にじぶんのお気に入りの絵があれば、美術館にさうさう足なんて運ばなくていゝもの(目を肥やすためにはよいですけれど)。アラ、わたくし、まちがつたこと、言つてゐるか知ら?
サロンをひろく見せる技に、鏡を使ふといふのがあるわねえ。おぼえておいて、悪くないことよ。あと、香をえらびたいものです。こゝでは感度を最大限にあげて、最良の室内フレグランスを選びたいもの。サロンは、大人の息継ぎ場所。紅茶を飲んだり、コニャックを飲んだりして歓談をする場所。こどもは立ち入り禁止。






