病気の説明・各論5-17
クレプトマニア(18)
窃盗症「クレプトマニア」について(続き)
9)窃盗症と摂食障害との構造的同一性
摂食障害と窃盗症の「合併」例は昔から多いと指摘されている(文献2, p.59, 100. 文献3, p.61)が、臨床上は当然の話である。わたくしに言わせると、「非行」をする患者の「性格」がだいたい似ているので、当然であるし、心理的ストレスを解放にゆだねる原始的本能が、過食と窃盗症で、「食」の摂取(食欲、採集、備蓄)において重なっているので、「合併」率が高くなるのである。
無我夢中で食べるのは快楽である(文献2, p.96)。特に菓子や菓子パンなど「甘い」ものは、頭の中を蕩とろけさせ「真っ白」にしてくれる。単純に楽しみに食べる場合もあろうが、かなしみと怒りに「我をわすれて」食べまくることもあるだろう。こういうときは全く何が何やらわからない。「理性は吹っ飛ぶ」。
嘔吐はどうか? これは人間の生理に反するから一般に苦痛に属するが、一気に吐瀉することには「爽快感」という快感を伴う場合もある。(自験例1件、上掲・原裕美子『私が欲しかったもの』にも同様の記述あり)
くりかえす行為には一般に、快感が伴うと考えるべきである。そうでなければ続かない。
窃盗症において、極端な典型例では、持参した大きなバッグに「採集」した食品をぎゅうぎゅう詰めにして偸ぬすんでいる例がある。
これはにわかには信じがたい行為だが、無我夢中で、あるいは激情に「我をわすれて」過食している行為に重ねると、本質的に、摂食障害と窃盗症は、同一の構造をもつ行動だと容易に判る。いわゆる「ためこみ症」も同じである。
嘔吐後に、おおくの例では、摂食障害者が自己のみじめさに泣いているように、窃盗後、またやってしまったと「後悔」にうちひしがれている窃盗症者の姿も、これら二つの障害が本質的に同一の構造をもつ感情だと判る。
10)「窃盗症」の診断と治療(小医なりのもの)
診断
(1)警察、検察の取調段階で、警察官、検察官が違和感を感じて、クリニックの受診をすすめたこと。窃盗症者は、何か、ヘンだなという感じを職業的刑事司法官にも与えるものなのだろうと思わされる。奇異感をもつ他人は、別段上記に限る必要はない
(2)本人に反省のきもちがあること
(3)上記、前々回と前回で述べた、6)7)にまとめたような性格、ストレス源、生活史があること
(4)初診時に小医が診察で受ける印象 再犯防止がみこめる人かどうか

