失ひし ものを探しに 冬帽子 有馬朗人
この季節になると、自然おもいだされてくる句。有馬朗人氏は、理論物理学者で東大の学長をされていた方。最近お亡くなりになったと聞きました。
失せ物をとりに外へでかける景を詠んだと、表面的にはそうなのでしょうが、や・かな・けりの切字がないにもかかわらず、しみじみした情感がでてくるふしぎな句です。
「失ったもの」とは何か?
それを「探す」あては、ほんとうにあるのか?
いったい、どこへ行くのか、この寒い中。
しかし、私には冬帽子があるからねと、ほんのりあたたかみがさしている。
そんな、意味世界の広がりがあるからなのでしょうね。
おとなの俳句です。
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