わが診療所には、考えて作った、円卓ライブラリがあります。
わが診療所インテリアのコンセプトは「居心地のいい、上質な空間」。
というと、もっともらしいのですが、要は、診療所の主人たる私が、くつろげる環境をつくること。コンセプトは「あくまで、わがまま」なのです。
「本を置かない」という選択肢も最初はあったのです。うっすらとはそれも考えました。実際、待合の席にすわっていても、いつでも見られるじぶんのスマホしかのぞき込まない患者さんが半数なので。
しかし、本はあったほうがいいのです。本があるのとないのとでは、雲泥の開きがあります。本が大すき、「読んでみたい! と思う本ばかりです」とおっしゃってくださる患者さんも半数あって、うれしい限りです。
本のディスプレイについて当初は、オシャレに、いかに少なく、かっこよく置き揃えるかを考えましたが、弊院は当代流行の喫茶店ではないので、そういう似合わないエネルギーは割く気がすぐに出なくなりました。そうして、どんどん積み上げ方式に。
そうしたら、評する方もあったものですね。「本棚を普通は使うところが、こんなふうに本を無造作に置きっぱなしにする、という方法もあったのですね!」とおっしゃる方がありました。整理の常識をくつがえしており、「衝撃」だったそうです。私はそんなにも大胆なことを考えていたつもりはこれっぽっちもなかったのですが…。褒められたのか、おしかりを受けたのか、当惑するばかりです。
(時どきは片づけていますが)テキトーに置いているので、めざす本を探し当てるには骨が折れます。しかし本好きの患者さんには「さがす悦び」というものがあるのだと正当化しています。じっさい、京都のおいしいパン屋さんというジャンルの本は奥に隠していても、いつも誰かが探し当てて外に出ています。
考えて作ったコーナーなのに、その後の発展は自然にまかせて、なるに任せていたのですが、実際のところ、この円卓にいま何冊の本があるのだろう、また、ジャンルはどのようにまたがっているのか、じぶんの数寄に任せているのはいいが自分でもよく把握していないというのはいかがなものだろうかと思い、この2ヶ月ほど、余った時間をみつけてはチマチマと書誌づくりをしておりましたところ、昨日、ようやく完成したのです。
この円卓にじつに536冊の本を蔵しておりました。
じぶんなりのわがままな分類項目で整理すると、以下の24のジャンルに分類できました。「定期購読誌」「美の壺」「季節、時候」「いきもの」「歴史」「京都本」「色彩、文様」「きもの」「美女」「食道楽」「茶の湯、煎茶・中国茶・ティー」「茶花、華道」「庭園」「建築、インテリア」「椅子」「数寄者、文人趣味」「作家」「東アジアの美術工藝」「西洋のおしゃれ、ダンディズム」「西洋の美術工藝」「皇室、王族」「その他」「絵本」「精神医学、心理学」。
最後の「精神医学、心理学」の本をのぞくと、私の本の蒐集基準は「生活の美的養生」を目的とするものと知れました。これは東アジアでは、中国の宋代以降の文人士大夫から始まる、美的生活を楽しむリラクゼーションのふるい伝統につながるもので、なるほどねとわれながら得心がいきました。
今後の新しい目標は「たましいの養生」にむけた、詩心あふれた「絵本」の蒐集で、絵本のための特別な本棚もしつらえようと考えを進めると、頭が痛くなってくるのです。李朝家具で適当なのがあればいいなあとか、うっとり想像したり、慾を言い出せばキリがなく、そんなお金はまだまだないし、で、今しばらくは不本意ながら休憩中というところです。
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