土曜日は、ふしぎな映画をみてきました。わたくしの生まれた年につくられたチェコ映画。『ひなぎく』。内陸のチェコに海はないから、たぶん湖か川に、泳ぎに来てゐる女の子が二人、あほな顔して坐つてゐるのね。

なんにもすることがない。しかし、時間だけは無限に持て余してゐる。この映画は空から戦闘機がいたるところを空爆するところから始まるのね。戦争映画なのかな?と思はせといて、この女の子ふたりが出てくるから、さういふところからして変な映画なんだけど、この娘たちが猛烈な食欲を発揮する。金持の「オジサマ」をとつかへひつかへナンパして、「あれもいゝ?」「これもいゝ?」とレストランで遠慮なく註文して、むやみに飲み食ひする。もちろん全部オジサマにおごらせる。いつぱい食べた後は、駅でそのまゝお別れ。「バイバ~イ」。

ふたりは友達なんだか、姉妹なんだか、レズビアンなんだか、そんなことはわからない。ふたりで暮してゐて、一緒にミルク風呂に入つたりして無邪気に遊んだりする。


しかし、花輪をあたかも帽子のやうに大事にしてゐるひとりは、蝶ずきの男と遊んだりしてゐるから、レズビアンといふわけではないんだらう。白黒シーンとカラーシーンを交錯させるのは、同じ1966年に制作されて世界中で大ヒットしたフランス映画『男と女』(わたくしはこの映画の「美」を愛する)でも使はれてゐる技法。しかし「技法」とほんたうにいへるかどうかは微妙で、単に白黒フィルムは単価が安くカラーフィルムは単価が高いので、節約のため、さうしたとクロード・ルルーシュは白状してゐるから、わたくしは啞然とした。たぶんこの映画もさうに違ひないと睨んでゐる。

当時の女の子のファッションつて、いゝと思ふ。シンプルでカッコイイ。膝までのワンピーススカートで下肢をサラリと見せてスッキリしてゐる。現代のやうに野蛮なブーツなんて履かない。圧巻は、高級なホテルの裏口から忍び寄つて、大テーブルに乗せられた御馳走を思ふ存分食ひ散らかし、飲み尽すシーン。

飲むお酒はジョニーウォーカーの赤。黒なら飲めるけど、赤なんて不味くて飲めたもんぢやない。しかし当時は、少し前のイギリスのチャーチル首相だつて、ジョニ赤を上等なスコッチウイスキーだといつて大事に大事に飲んでゐたくらゐだから、わたくしなどは贅沢に慣らされてしまつたのだらう。シャンデリアによじのぼつて、ブランコよろしくあそびまくるのがたのしい。

なんでも、これはヌーヴェルヴァーグな映画なんださうだ。岡崎京子ら以下畧にいはせるとガールズムーヴィーなんださうだ。しかし、どう考へてもちがふだらう。これは当時のチェコスロヴァキアの共産党政府を批判した政治映画なのだ。チェコスロヴァキアを民主化しようとしたアレクサンドル・ドゥプチェクはソ連に連行されて、民主化運動は侵攻してきたソ連軍戦車によつて鎮圧された(プラハの春。1968年)。幸ひ、ドゥプチェクは虐殺されることはなかつたが、幽閉されて晩年まで暮らしたらしい。






