さいきんブログを更新しないぢやないの、と幾たりかのをんなどもが不平を鳴らしてゐる。文章を書くのは、乃公おれの勝手ぢやないか。面前にあつて「センセイ…」とおづおづ註文してくるのならいざ知らず、甚だしきはメールを送付けて督促してくるのまであるから、啞然とさせられる。然しこれも愛情表現の一種かと、神のごと慈しみぶかいわたくしは、寛きこゝろを以て之を赦す。
をんなA「センセイはね、いくたりものをんなからの誘惑のチャンスを、みづから、失つてきたわねえ」
小医「それやあまたどうして?」
A「気づいてらつしやらないの?」
小「だから、何サ」
A「センセイ、爪がぴかぴかぢやない? キット患者さんたちからgayだと見られてるわよ。わたくし、そんな男の人、見たことないもの。どうしてそんなことしてらつしやるのか知ら」
をんなB「先生は、御洒落なんです。わたくしなんて、いつもウットリ拝見して、磨いてゐらつしやらない時は、先生、けふはどうしたのですかと詰問してきました。だけど、爪を磨いてゐると、gayだなんて話は初耳ですわ」
A「センセイ、このをんな、何者なの? センセイに向つて偉さうに」
小「まあまあ、喧嘩するなよ。おれは至つてstraightなをとこだから。「女子度」は異様に高い癖に、思想はmachoで序にアッチの方もハゲシイから。知つてるだろ?」
をんなC「えゝ、わたくし、深く存じてをりますわ」
A「チョット、センセイ、この女、だれ?」
小「知らんよ。まあ、みんな、仲良くさ、仲良く。爪磨きはね、こゝには来てゐないをんなから昔習つたんだ。しかし意識してするやうになつたのは、チャップリンの黄金狂時代(1925年)を観てからだね。みごとアラスカで金を掘当てたチャップリンが、富豪になり、分厚い毛皮のコートを着込んで乗込む豪華客船の一室で、チャップリンは手を差伸べて、メイドの娘に爪を磨かせてゐる。爪磨きは、乃公は「こゝろと時間によゆうがある」男なんだぜといふことを衒示げんじする手段といふわけなんだね。世間の俗物がロレックスとか高級時計をぶらさげるのとは違つて、金属や機械が大きらひな乃公は、かはりに爪を磨くといふわけサ」
C「先生は、指輪もなさらないですものね」
A「それもいゝ齢をした男としてはアヤシサ満載。せつかく、エロい手掌を持つてゐるのに、やツぱりgayなんぢやないの? 両刀づかひとか?」
小「乃公はをとこは大きらひさ。このまへ30年ぶりに男同士で酒を飲みに出かけたことがあつたがね。金属は性に合はない。だから指輪はしない。昔持つてゐた時期もあつたが、二束三文で売飛ばしてしまつた。因みに乃公がデザインしたんだがね」
A「え、その指輪つて?」
小「昔のことサ。もう、をんなはすぐに独占欲を出してくるからヤだよ」
をんなD「それはさうと、先生、こんどの御約束、お忘れぢやないでせうね? キットよ」
小「ハッ、もちろんでございます。いまから心待ちにしてをります」
A,B,C「なに、畏まつてんのよ」
小「まあね、素敵な約束をしたんだよ」






