ぜいたく

こころに適うって、案外どころか、難しい。

だから、わが心にかなう、ということは、ぜいたくで貴重なんだ、ととりあえず、そうしておこう。

しかし、人間というものはたいてい、つれづれ草にも既にあるように、こころに主(あるじ)なく、「わがこころにかなう」ことが何か自体、わからない人も多いので、ぜいたくを味わえることは益益とおのく。…かも知れない。

それでも、じっと心をすませば、ぜいたくは存外、安くても味わえるなあ、と最近思えたことがあった。

たとえば、私にとって、それは、水曜日の水や金曜日の金の字が楷書で書くとわづらわしいので、スマホ片手に、水の字や金の字の草書を調べて書字の苦痛を減ずることであったり(0円)、龜末廣の「木々の雫」を舌頭にころがすことであったり(600円)、枕頭にくちなしの鉢を置いて、香を嗅ぎながら夜眠ることであったり(300円)、御池西洞院にある茶舗小山園に土曜の帰り、寄り道をして、抹茶ソフトを食べることであったりするのである(360円)。

ある人にとり、なにが快楽になるのか、それはその人の小さいときからのうまれつきやそれまでの生き方、個人の「歴史」といったものと深くかかわりがあるのは間違いない。「なんとなく」といったものは実はない。

むつかしいことを少し書いたが、ほんとうはそんなことはどうでもよく、抹茶ソフトをたのしみに、これから小山園にいそいそと向う小医であった。いひひ。

 

関連記事

  1. Close Your Eyes

  2. 知りたくない権利

  3. 算術の少年

  4. What a lovely thing a rose is !

  5. 懐かしの日本映画劇場

  6. いにしえを慕う

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

このサイトについて

京都市中京区蛸薬師 四条烏丸駅・烏丸御池駅近くにある心療内科・精神科クリニック「としかわ心の診療所」ウェブサイト。診療所のこと、心の病について、エッセイなど、思いのままに綴っております。
2024年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

カテゴリー